新しいモデルをリリースする度にプロジェクター市場を席巻し、シーンのイニシアティブを握ってきたJVC。今期もDLA-X90R、DLA-X70R、DLA-X30と強力なモデルを発表。うち上位2モデルは新開発のe-shiftデバイスを搭載することで、4K大画面映像ヘの対応を可能とした。ここではスケールアップしたその実力に迫る。
新開発のe-shiftにより細密度が格段に向上
3D対応に加え、今年はいよいよ4K大画面映像の時代へ突入!
その幕開けを飾るかのように、JVCがこの上なく強力なプロジェクターをリリースしてきた。
NHKとの共同開発ではすでに8Kに対応する業務用スーパーハイビジョンにも取り組んできたという同社。そこで磨きをかけた先端技術を、満を持して民生機に盛り込んだのが今回のラインナップというわけだ。3Dの際もそうであったが、高いハードルを軽々とクリアした上で、さらに想像以上の完成度のモデルをリリースするのが、ここ数年のの流儀。もちろん、それも今回のように次元が数ランク上の開発プロジェクトで、『地肩を鍛えてきた』からこそ。150キロを超える豪速球をガンガン投げ込みながらも、『まだまだゆとりを残しているのではないか』と思わせてくれる頼もしさが、確かにJVCにはある。しかし、それも先端技術への長年にわたるトライアルがあってのことなのである。
前置きが長くなったが、同社がリリースするのは、下位モデルからDLA-X30、DLA-X70R、DLA-X90Rの3機種。うち70Rと90Rの2モデルが4Kに対応する。コアなシアターファンが目にする本誌においては、当然、上位2機種に言及すべきだろう。
一見したところでは、70Rと90Rともに外装上の変更はほとんど見られないようだ。D-ILAパネルもこれまでの0.7型フルHDタイプで前モデルと変らない。
では、なぜ4Kに対応することができたのか。その謎を解くカギが、新しく搭載されたe-shiftと呼ばれるデバイスである。D-ILAパネルとレンズの間に搭載されたこのデバイスによって、開発陣が狙ったのは、ピクセルシフトによる解像度の向上だ。もっとシンプルに表現すると『画素をずらす』ことによって、1つの光源から2つの画素を取り出し、実質的な画素数を稼ぐのだという。これを光学系と電気系のそれぞれに新しいオペレーションを盛り込むことで実現する。もちろん、その基本的なシステムは、前述した業務用スーパーハイビジョンを開発する中で生まれたテクノロジーである。また電気処理の要となるLSIについても70Rと90Rのために新規に起こし、高周波成分を復元させるアルゴリズムも両機のためにブラッシュアップをかけた。ちなみに、e-shiftを中軸とした機構の導入よって得られるパネル解像度は、3840×2160画素。これは従来の倍に相当するレベルである。
もうHDには戻れない?
JVCが見せる魅惑の映像
屈折率を切り替えることによって、2つの画素を取り出す。これがe-shiftデバイスにおける光学系の取り組み。さらにここに電気系のオペレーションが同期する。ここでは損なわれがちな高周波成分を復元するとともに、生成した補完画像を割り当てて、解像度を向上させる……。と、ここまでがe-shiftデバイスを軸とするピクセルシフト(=画素をずらす)のおおまかな流れなわけだが、話だけだと、中には「副作用もあるのでは?」と疑う読者もおられるかもしれない。
しかし、そういった心配は今のところ無用と言い切れる。その点は、筆者自身も今秋10月22日にアバックが開催した視聴イベントで確認済みだ。このイベントは主催のアバックが「国内最速!」と銘打ってJVC本社で行ったものである。うれしいことにプレゼンテーションよりもあくまで視聴を重視した内容で、一気に十数本のコンテンツをチェックした。結果、70Rと90Rの完成度の高さを実感することになった。
なんといっても、両機ともにテクスチャー表現の細密さが格段にハイレベルになっていた。とくに個人的に際立って感じたのは、ガラスや宝石などにおけるディテール表現の凄さ。ちょっとした反射の変化をも実にクリアに、もっというと凄みさえともなうほどに美しく描画してくれる。たとえば『ツーリスト』の一幕もそう。アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップがグラス片手に語らうシーンでは、グラス表面の光沢感や透明感に以前とは明らかに異なる鮮明さが感じられた。とくに90Rでは、ちょっとした光の動きや揺らぎに今までにはない発見があったほど。質感そのものもベールを一枚剥ぎ取ったかのように上質だった。『英国王のスピーチ』では、衣服の素材感などにも注目しながらチェックしたが、細密度が高まっただけに描き分けのレベルもやはり向上していた。
3D映像の進化も明らか。3Dの際はe-shiftは駆動しないが、今回から新規にクロストークキャンセル機能が付加されるなど、細かい気遣いが感じられる。駆動回路の見直ししたほか、光学系にもファインチューンが施され、立体感も以前よりかなり豊かになっているように見受けられた。
ネイティブコントラストは90Rが12万対1で、70Rが8万対1。それだけに表現の奥深さでは90Rが一歩二歩先を行くが、現行ラインナップと比べれば弟分の実力もまた圧倒的。ついに到来した4Kの時代にあって、両機がリファレンスモデルとして、ユーザーはもちろん他社の注目を集めることは間違いないだろう。何はなくとも、まずはぜひ両機の実力を堪能していただきたい。HDでとどまっていることがためらわれるほどに魅惑的な映像世界が、そこには広がっている。
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今回の4K対応においてもっとも貢献したのが、このe-shiftデバイス。屈折率を変化させることで、1つの光源で2つの画素を取り出すという。応答速度にすぐれたOCB液晶を採用。 |
NEWラインナップ |
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DLA-X90R
希望小売価格\1,050,000(税込)
SPEC
●解像度:3840×2160(3D再生時は1920×1080 )
●明るさ:1200lm
●コントラスト比:ネイティブ 120,000:1
●騒音レベル:20dB(ランプモード 標準モード時)
●デジタル映像入力:HDMI×2
●本体寸法:W455×H179×D472
●質量:約15.4Kg |
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DLA-X70R
希望小売価格\892,500(税込)
SPEC
●解像度:3840×2160(3D再生時は1920×1080 )
●明るさ:1200lm
●コントラスト比:ネイティブ 80,000:1
●騒音レベル:20dB(ランプモード 標準モード時)
●デジタル映像入力:HDMI×2
●本体寸法:W455×H179×D472
●質量:約15.4Kg |
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DLA-X30
オープン価格
SPEC
●解像度:1920×1080
●明るさ:1300lm
●コントラスト比:ネイティブ 50,000:1
●騒音レベル:20dB(ランプモード 標準モード時)
●デジタル映像入力:HDMI×2
●本体寸法:W455×H179×D472
●質量:約14.9Kg |
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